詩人:千波 一也
愛のうたはいまも未完成だから
せめて
おもりは丁寧に縛りつけてあげよう
そして
潔く両手を離そう
いたずらな熱を与えてしまわぬように
いまから澄んでゆこうとするものを
いたずらに
滲ませてしまわぬように
潔く両手を離そう
最後の水音は思った通りにあっけないから
軽かっただろうか
重たかっただろうか
迷ったふりをしながら
いつのまにか慣れてしまっている
せめて
擬音に委ねてしまわぬことが
唯一のすくいのすべだと信じている
最後の最後までには
愛のうたが完成することを願いながら
さよならの居場所は零度
のぼることも
おちることも
平等にかなうところ
なげきもよろこびも同じことかも知れない
いたみもあこがれも同じことかも知れない
だからきっと、
続きの言葉は波間に託してオールを流した
公平でなければ
こうかいは終わらず
こうかいは始まらないから
公平であるためにオールを流した