詩人:さみだれ
鏡に色はない
ただ景色を真似るだけである
そんなものを彼女は毎晩磨いた
自分の顔を嫌いもしない
私は彼女をもっと知りたくなった
雲には触れない
ぽつりと、時に覆うように空にあるだけである
彼女はそれを天使だと言った
雨に大地は雪に子供は喜び
それらは必ず誰かのためになると言った
心を私は信じない
いつも疑心や裏切りが付き纏うのである
それすら彼女は包むように抱いた
もっと大切にしたい
私は彼女を何よりも愛するようになった
やがて幾年か過ぎ
私は当たり前に歳をとる
皺はあちらこちらに刻まれた
だが私は死ぬことに恐怖は感じない
彼女は生きることを素晴らしいと感じるために死んだのだから
”心に残ったものが一番大切な記録だから
覚えていてほしいの 今日の私を
あなたの心に残ったならそれだけでいいの
私はちゃんと生きていたって
そう思えるから”