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詩人:どるとる
おもむろに月に一泡 ふかせたくて
夜通しかけてこしらえた
下手くそなつぎはぎだらけのロケット
発射台から夜空に向けて放つ計画を立てた
ペットボトルで作ったロケットだから
宇宙になんか届かないことくらい
わかっているさ
知っているさ それでも
月を目指して飛び立った
僕の夢を乗せたロケット
水しぶきあげて夜空に飛び立つ
その瞬間、僕の中でなにかが変わった
なにが変わったんだろう 今もわからないけど
あの日の夜 届かないはずの宇宙に 指先が届いたような
そんな気持ちになれたんだよ
冴えない毎日をがらりと変えたくて
プライドというちゃちな服をまとった
その場しのぎだからすぐに飽きてしまう
ほら気づけば僕はカッコ悪いままの僕だ
壊れたペットボトルのロケットの残骸を
ひとつ残らず拾って宝物にしたけれど
いつからか恥ずかしい傷跡のように変わった
どうにもならない何かに必死に
抵抗したかっただけだなんてさ
勝手な理屈を捏ねてあの日の弱い僕を
なかったことにしたかっただけなのに
強がりは未だなおらず僕は今も弱いまま
たとえばあの日の夜のささやかな抵抗を 弱い僕ごと愛せたら
まだ カッコがつくのにな
情けない音を立てて草むらに落ちたペットボトル
まるで僕のようで悲しくなったことを
あの日の鈍い痛みをまだ覚えてる
あの痛みが 僕を弱い僕から 救ってくれる
光になることをどこかで気づいてる
さあ もう一度 僕は僕を試してみる
月を目指して 僕も飛び立つロケット
月を目指して飛び立った
僕の夢を乗せたロケット
水しぶきあげて夜空に飛び立つ
その瞬間、僕の中でなにかが変わった
なにが変わったんだろう 今もわからないけど
あの日の夜 届かないはずの宇宙に 指先が届いたような
そんな気持ちになれたんだよ
そんな気持ちになりたかったんだよ。