詩人:千波 一也
蒼く枯れるまで傍にいて下さい
たなびく煙に ほそめるひとみは
可憐な強さを匿(かくま)って
夜風に つめは うるおいながら
狡猾(こうかつ)な よわさに長けてゆきます
そら 、笑みの波紋が にじをさす
おぼろな橋の彼方から
数えなさい、と諭(さと)されています
今宵も
これは 襲来の類なのでしょうか
そろそろ 衝動に駆られてしまいそうです
どうか
壊す、などという言葉を選ばずに
紅く透けるまで傍にいて下さい
万葉のしらべは
黒髪を梳く櫛の音(ね)に よく馴染み
気紛れに仰ぐ三日月は
黒いひとみに
映えて
久し
く
闇夜を満たす つとめは
灯火に 委ねてしまいましょう
さすれば、ほら
語り部の名に 固執することなく
すべに 甘んじてゆける気がいたします
それで良いのです
かなうもの と
かなわぬもの とを より分けず
舌先やわらかく 発音いたしましょう
いろいろ、 と
耳元ちかく で