詩人:番犬
所詮、詩など言葉の羅列にすぎない
心を込める?
誰かに伝える?
馬鹿を言うな
人間と人間が顔を突き合わせ、幾百の言葉を交わしても交わしても、絶対に伝わらない事など、この世には掃いて捨てるほどに有るというのに
だからこそ現実にもがき苦しむ人間がいるというのに、詩人とはどうも過大評価を好むようだ
時に詩の中には宇宙があると言い出したり、時に詩の中には無限の可能性が秘められていると言い出したり
いいか
人間が人間の心を理解するのは、おそらく宇宙の真理を一人発掘するよりも困難だ
そして言葉の羅列だけでそれを伝えるというのは、宇宙の創造を凌ぐほどの至難の業だ
そこの詩人よ
思い上がってくれるなよ
貴様は所詮、自分の為だけの読み物を書いているにすぎないんだ
…
…
…
いつかどこかで触れた
血まみれの詩があったんだ
雨風にさらされ流され消えた
最後まで在ったような
最初から無かったような
狂ったように書き殴られた言葉の破片
狂うという事は最後の最後まで捧げ信じる事と同じかもしれない
そこに確実に存在した情熱に、俺は詩という物の生き様を見い出した
対比しよう
世界の終わりまで
幸福と不幸を天秤に乗せ
世界の終わりまで
メギドの空の下
世界の淵を見つめながら
…
…
…
…
俺の心の中でずっと泣いてる男の子
慰めの言葉を探して
俺はここまで来たのかもしれない
もっと遠くまで行くのかもしれない
そして最後には帰ってくるだろう
紆余曲折の宝探し
他人から見ればゴミくずみたいな言葉を探す旅
ああ
俺が詩を書く理由はそこにあったのか
いてくれたのか
ついてきてくれたのか
…
…
…
…
…
これは誰でもなく紛れもなく自分自身への詩である