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[189662] 宇宙飛行士になりたかった君に

詩人:どるとる


はじめて月に降り立った
宇宙飛行士は言ったという
「地球は青かった」
そんなことさえ今は当たり前
でも見たこともない地球の外
疑いばかりが夢を汚す

燦然と輝く 数千の星の中に 僕らと同じ
命がまだ生きているなら答えておくれ

受け取ってくれないか はるか何億光年先のメッセージ

たとえば君も笑ったりするのかい? 何か楽しげなことに

君の星にも夜があるなら君も 夢を見たりするのかい?

君も言葉を話したりするのかい?
なりたいものとかあったりするのかい?

僕は 宇宙飛行士になりたかったよ
知らない光にふれたくて

まだ会ったこともない誰かに会いたくて
憧れの羨望で 空を見上げていたんだよ

ハロー こちら地球です
受信は良好 ノイズもない
ただし通信は 一方通行

出来損ないの段ボールでつくった
即席の宇宙ステーション
3日と持たず 雨風に負けた

ちっぽけなことで悩んだり迷ったりしている
僕らは なんてくだらないんだろう

空は広く世界はこんなに果てしないのに
僕らの一歩は小さい上に頼りない

安物のちんけな猿の真似事
化学のセットでこしらえたプラネタリウム

電気を消して暗闇に浮かぶいくつもの偽物の星の光

そうやって僕らは届かないものさえ 手に入れようと試行錯誤する

それが可笑しくて たまらなく可愛くて 愛しいんだよ


僕は宇宙飛行士になれないだろう
せいぜいなったつもりが関の山

それでもいいんだよ 星に代わるものはそこにある

いつも僕を迷わないように照らしている

淡い光のような 今にも消えてしまいそうな
だけど時に力強く目映いくらいなんだ
僕だけの星

僕が見つけたたったひとつの星

「地球は青いかはわからないけど君がいればそんなこと知らないままでいい」

2015/10/30 (Fri)
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