詩人:さみだれ
声が聞こえていました
枕元で囁くそれは
次第に遠くなり
いつまにか聞こえなくなりました
その頃には
夢で夜を見ることも
愛おしいと思うことも
すっかりなくなり
ただ一日の終わりを目指し
生きていました
(私は素晴らしい人間とはほど遠い
ただの野良犬です
嫌なものから逃げて
好きな人に媚びる
ただの野良犬です
この遠吠えは
人間だった頃を思いだし
懐かしさに震えた喉が
夜の闇に引っ張られて生まれたものです
もしも
私の声が夢の途中に聞こえたなら
聞こえないふりをしてください)
気持ちは向いているけれど
心は到達しているけれど
魂はそばに寄り添うけれど
声だけが聞こえません
枕元で囁くような
眠りの詩を
読んでください
一日の終わりに