詩人:千波 一也
ときには
顔を真っ赤にしながら
たくさんの風船を膨らませてきました
割れたものも
木の枝から離れなかったものも
見知らぬ空や海の彼方へと流れたままの
ものもあります
が
それは
片一方の話です
思いっきり吐きだした空気は
同じぶんだけ
こころのなかに戻りますので
風船はいつも
かならず、ふたつ
直接に見えはしなくても
風船の住まう部屋が
こころのなかに
あどけないピンクと
もどかしいブルーと
したたかなグリーン
いつまでも色あせることなく
懐かしさの温かな部屋に
風船は満ちて
揺らいで
あやうげなオレンジと
すずしげなパープルと
かろやかなイエロー
正確な日付は自然と忘れてしまいますが
色合いひとつで察しがつくでしょう
どうぞ心配なさらず
やわらかく
ひとみを閉じる日々を続けてゆけば
かならず時計は
笑んでくれます
だから、ほら
あふれさせてゆきましょう
限りのある狭さに
風船たちを
深呼吸で