詩人:千波 一也
逢うことは必ずしも救いとならない
つかめない泡のなかで
幾百の約束は
いさぎよく果てるためだけに
咲き誇る
散りゆく夜の
風たちは
雨に満たずに群れをなす
寄る辺をしずかに願いながら
それは
ひそやかな高潮となる
橋のたもとは始まりか
褪せた花弁は最果てか
放る言葉はみなもを跳ねて
かたちを為さない魚が還る
暗闇は
透き通るものたちの安住の浅瀬
はぐくみのかご
統べての根源の水のあそびに
馴染んだいのちは
尾を忘れゆく
見境もなく溢れてゆくものに
心地よく溺れてしまえるのならば
濡れてゆくことに
たやすく震えはしないだろう
川霧の向こうに向こうがある
乞い続ける姿のおぼろさは
いずれの刃にも屈することなく
可憐な傷口と
その芳香のなかで
しるべに詳しい迷子を重ねる
辿りつき得ぬ暦が増えてゆく
逢うことは必ずしも救いとならない
けれど
辿りつき得ぬ暦は消えてゆかない
川霧の向こうに川霧がある