詩人:千波 一也
結び目を
ほどこうとする指先は
きみの吐息の熱さのなかで
やわらかに
能動のつもり、の
受動となる
名を呼ぶほどに
ひとみはひとみの鏡となって
きみは時折
ひとりで勝手に向こうへと
だから、
つよく
つよく優しく腕に抱く
そこからふたたび
ひとみはひとみの鏡となって
惑わぬための
名を呼ぶほどに
汗の流れにほだされてゆく
ちからの加減はいつもむずかしい
くちびるを重ねるたび
もいちど欲しくなって
もいちど重ねては
終わらない
くれない色のくちびるは
毒に染まっているのだろう
死には至らなくとも
幾度も繰り返す刹那は
ちいさな輪廻さながらに
ささいなふちで
狂い、乱れる
火照りのすべては頬をともして
ことの合間に恥じらえば
ももいろ強く
その内なる美味をおもうとき
きみは
背筋をしずかになぞり
月が揺れる
みごとに玩具を統べるのは
きみのこゆびの爪の
ももいろ