詩人:けむり
アア…、やかましいぞ秒針!
そんなにぼくをせき立てたいのか
だが時計、
お前はぼくに似ているな
ゆっくりと狂っていくのだ
気付かないほど、ゆっくりと…
そしてなにを刻む?
乗り遅れた世界で自我を鼓動させながら、
先へ先へ夢を馳せるお前は引き潮におぼれながら、
その遅れ続けるリズムの中でなにを掴もうとする?
ほらまた秒針が一歩遅れた…
朝が来る
だがそれはすでに人よりも遅い朝だ
誰もがもう明日を掴みかけている
そして明日はもうすぐだ
またたく間に!陽はのぼりしずみ、
ぼくのえがくビジョンなど時のはざまでピンぼけする
そしてみんなはもう明後日を見てる…
ぼくの叫びは雑踏にかき消され
ぼくの震えは直立するビル群によって無きに等しい
ぼくは脆弱な理屈屋だ
説得力ある言い訳ばかり考えている
両手で耳をふさぐ
時計を壁に投げつけたくてもそれは後で困る
アア…、静寂はいっときの甘露
目をつむり、思いを気ままに踊らせる
だがやはり聞こえてくるのだ!秒針が…