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[189917] アネモネ

詩人:どるとる


ピントのずれた物語
見えてるようで見えてない節穴の目

赤とんぼ 飛び交う田舎道
友達とはぐれてしまう 夕暮れ

いつまでも もういいかいって声が山々にこだまする

誰かが言っていた 多分空耳さ

それはじんわりと手のひらを染める冬

赤茶けた屋根の上を滑るように降る雪

かじかんだ手を こすりあわせて

通りすぎていく 窓から望む原風景

いつか出会った優しい痛みのようだ

ネジの外れたタイプライター
軋みながらも 仕事だけは難なくこなす

名前をつけたよ 君のはアネモネ
分厚い辞典に挟んだタンポポの押し花

いつまでも 引き出しを閉められずに
眺めてる レンズの向こう

僕を見ているのは あの日の僕だ

楓舞う 並木道に誰かが描いた切なさ

言葉もなくただ立ち尽くすのは凩

ふいに誰かに名前を呼ばれた気がした

振り返ったときには もうあんなに遠く

手放した風船のように 雲のずっと向こう

目を閉じたまま 息をととのえて
散らかした部屋片付けて

思い出重ねた写真も消えない雨の冷たさも

誰かが この唇に残した甘い余韻も
染まってゆく ただ汚れのない純白に

それはじんわりと手のひらを染める冬

赤茶けた屋根の上を滑るように降る雪

かじかんだ手を こすりあわせて

通りすぎていく 窓から望む原風景

いつか出会った優しい痛みのようだ。

2015/11/19 (Thu)
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