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[189921] まばたき

詩人:どるとる


思い出は 凪いだ

海のざわめき

潮風の ささやき

どれだけの言葉も

どれだけの愛も

形のない 波に

さらわれて しまう

まばたきも できないほどのこの幸せを

痛いくらいに奥歯でかみしめたい

空高く積み上げた 涙を光に変えて

空に放つ 手向けの花のように

ページをめくれば

新しい色に出会える
新しい 洋服と恋人

どれだけの季節と

どれだけの風景を

勝手気ままに

忘れてきたかなあ

息継ぎもままならないほどのこの幸せに

肩まで浸かり その熱にうかされていたい

はるかずっと先まで続く物語のあらすじ

写したみたいに 同じ空と道が続く

ワイパーが 雨を 邪魔くさそうに

しきりに 忙しそうに 退かしていく

ちっぽけな 悲しみのせいで

希望がいよいよ 底が尽きそうだ

ぼんやり 浮かんだ
今なら簡単に死ねそうだ

安易にそう思った

まばたきも できないほどのこの幸せを

痛いくらいに奥歯でかみしめたい

空高く積み上げた 涙を光に変えて

空に放つ 手向けの花のように

雲の切れ間に浮かぶ虹のかけらのように。

2015/11/19 (Thu)
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