|
詩人:どるとる
ざっと一週間かけて築き上げた 僕らだけの自信作の秘密基地
「僕らの七日間戦争」に憧れていた頃の傑作品
忘れられたような空き地の裏の雑木林の奥にかまえた
体がくたくたになって日が暮れるまで遊びまわった
屋根の隙間から 見える夕暮れや星空を今もおぼえている
魔法なんて使わなくても あの頃は見るもの聞こえるものすべてがあざやかだった
のぞきこむホロスコープの向こう いくつもの思い出が
万華鏡みたいに のぞきこむたび 形や色を変えて
過ぎ去った 今もあの頃と少しも変わらないままそこにあって
夢見人たちの秘密基地には天高くかかげた「青春」という 旗が揺れている
雨風に 負けるたび補強していった 直しては壊れて 壊れては直して
近所の悪ガキに壊されることしばしば そのたびに 涙をのんだよ
お菓子やジュースを飲みながら ラジオを聴いた
家出をするときはきまってこの秘密基地に集まって ささやかなストライキを起こした
あの頃の僕らには恐いものなんてなかった 仲間がいれば いくらでも強くいれた
ただ ばかみたいに笑い転げて くだらない話に花を咲かせた
缶けり 鬼ごっこ かくれんぼ やることはたくさんあった
遊ぶことに忙しくしている僕らは 多分幸せだったんだろう
僕らの心の引き出しの奥に いつからかしまってしまった思い出の話さ
追いかけても追いかけても つかまえられないほど明日は遠くて
いつまでもこうしていれると思った
のぞきこむホロスコープの向こう いくつもの思い出が
万華鏡みたいに のぞきこむたび 形や色を変えて
過ぎ去った 今もあの頃と少しも変わらないままそこにあって
夢見人たちの秘密基地には天高くかかげた「青春」という 旗が揺れている
いつの間にか僕らにはそれより大切なものが出来てしまった
だから思い出はただの思い出になった。