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[88184] さえずりの日に

詩人:千波 一也


やわらかな枝を手折る途中で

雨雲をみた


止まり木をなくしてしまえば

よけいなうたを

聴かずに済むから

こころは

しずまる筈だったのに

しのびよる冷たさのなかで

雨雲のたくらみを

聞いてしまった


濡れてしまう羽は

声もなく震えるだろう

それは

あまりにも重荷だ


なすすべもなく

しなだれてゆくかたちなど

知らなくていい

詳しくなってゆくことが

おろかさに

つながることもある


許しが

やさしくないならば

ひたむきに

許さぬことだ

ほころびてゆくまで

頑なに


やわらかな枝を手折る途中で

厭うべき方角の

細やかなあやまりを

みつけた日に

窓は

磨かれて

みずいろが

遙かに

なる


そうして

小さな鳥が

そらへと消える


2006/10/25 (Wed)
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