詩人:千波 一也
枯れることなく
花の咲きみだれても
それは
開くことをしない
閉じられたままの
かなしみの
すそ
風が
つねに優しいならば
怯えることも
すさぶこともないけれど
こおれるものを
溶かしうる熱量を
おぼえることもない
風は
通り道を
易しく拓きつづけて
はげしく
或いは
ささやかに
それはそれは自由に
いたみを
残す
月そのものに
おそらく翳りはない
手がかりならば
そう
異国への旅を
よろこべばいい
思い当たる横顔の数だけ
純粋さは疑われるだろう
ほかならぬ
おのれに
ちいさな足もとには
少しの土があればいいのに
のぞみはいつも
縛りつけられたまま
気付かずに堕ちてゆく
此処がそれ
あこがれの対極