詩人:千波 一也
祈りのままにときは降り
季節は積もりゆく
それが
落ちるということの
ひとつのかたち
数えうる指先には
幾つでも隙間があって
さがしてゆくほどに
さがしものは
増えてゆく
ゆるやかに適合性を失って
不慣れにも
願いの重さを背に負って
代わりに
臆病になってゆく代わりに
誰もがみんな
褪せてしまえる権利を
握る
記憶は停まらない
忘れるためだとか
覚えるためだとか
それぞれに
おぼろな文字の滲みを
はっきりとみとめながら
あたらしくなるたびに
過ぎた総てをつれて
なつかしさは
はなはだ複雑に純粋な迷路
ただそれだけのこと
褪せてしまえる権利の
わかりやすさには
ためらいのあと
誰もがつよく
つよく握り
深みを帯びる肌色のうえ
祈りのままにときは降る
祈りのままにときは降る