詩人:千波 一也
あの塔は
いつ崩れても
おかしくはない
と
その
語りは
誰かにとって
あたらしきを築き
誰かにとって
もはや
壊れたままのかけらで
見えないはずの
ことばのかたちは
日々を
平等に
取り囲んでいる
そうして斜塔は
アンバランスという名の
均衡のなかで
きょうも静かに
立っている
ここは
バランスに
明け暮れる者たちの
不均衡な地平
たとえば月の名に
たとえば星の名に
誰かにとっての
故郷の定義が
変わりゆく
そんな事態もあるだろう
そういう地平に
ひとは棲んでいる
そうして斜塔は
もしかしたら
ひとと寄り添って
きょうもなお静かに
立っている