詩人:どるとる
レンズの向こうに見ていた君の笑顔
出来上がったばかりの写真は
ピントが少しばかりずれていた
寝坊助の桜の咲く季節に
僕らは はじめてキスをした
遅咲きの恋は 静かに 歩き出したよ
君と 行きたい場所がある
君に 見せたい景色がある
君に聞かせたい 事がある
あんなこと こんなこと
たくさんありすぎてとてもじゃないが
時間がいくらあっても足りやしない
きっと桜が咲くたびに 僕は今を
思い出して どうしてあの日君の手を
離してしまったのかと 何度も何度でも
後悔と懺悔の境を 行ったり来たりするよ
君が最後に見せた涙の理由をあの時の僕はまだ知らない
今なら 痛いくらいにわかるのに 手を伸ばしても
君の 笑顔はもう僕のものじゃない
はじめての給料で買った銀の指輪は
君の指に合うかな 見劣りしないかな
君があまりにきれいだから
そんなこと考えながら君に会いにゆく
さよならのあの日 冷たい雨が降ってた
別れ際交わしたキスは恋の幕を降ろした
新しい本や 映画を見つけても
君に似合いそうな靴や服を見つけても
僕らはもう恋人じゃないと気づく
今じゃ どこにいるかもわからない
帰り道、宛もなく呼んでみた声は
白い冬の空に とけて消えた
もうじき訪れる春の足音を聞きながら
風の中に 雨上がりの空に 君の面影を探すよ
僕は君を愛していたなくしてはじめて気づいた
それはまるで花が咲くように
未練がましいヤツだと笑ってくれ
誰かに愛されてる君はもう僕の知ってる君じゃない
似ていても違う色さ。