詩人:さみだれ
ウサギの耳を
子供たちは引っ張って
それはそれは楽しそうに笑っている
浮かない顔の
彼女の隣に
紳士はニタニタと笑い近づいて
肝心の主役は
隅の柱にもたれて
うつむいている
白いクロス
染みになったジュースを
名残惜しそうに見つめる
テラスには
罪人が頬杖ついて
夜の闇を気だるそうに見つめる
音楽は誰の耳にも届かず
ただ空気中に消えていくだけ
真っ赤なドレスは被っていた
特別なのは誰なのか
ウサギの耳は
たくさん汚れて
今はテーブルの下に
シャンデリアを
落とそうと企む執事も
今は招待客を見守っている
恋人は
背中を出して
男たちをたぶらかす
肝心の主役は
相変わらず隅の方で
暗く塞ぎこむ
世界の終わりを知らせる
鐘の音が聞こえる
それでもパーティーは続いた
誰かが帰るまで
世界は終わらなかった