詩人:千波 一也
傾くことの反動に
ひらくための
ちからは
生まれ
それは
必ずしも
あしたには
繋がらないけれど
むかしへと遡ることも
あるけれど
ちからのかぎりに
望みをもって
ためらって
重さの類は問うたりせずに
傾くためのこころを
ひらくためのちからを
日々に
掴め
詳細な
はじまりを知らず
おわりもまた知らず
ただ
わたしたちは
零には触れられない
触れてはならない
そんな気がして
笑顔も涙も
なつかしさも
常にかたちを変えて
わたしたちは零ではない
それだけは確かだと思う
ときを往くということは
こんなにも
優しい約束に満ちて
それゆえに
傾くことの反動は
裏切らない
けっして
機関を裏切らない