詩人:どるとる
優先席に座る老人
さっきやっと空いた席に座る
つり革は届かない
ポールは冷たい
すっかり白髪になった頭を撫でながら
年寄りに優しくない世を嘆き 人を嘆く
いつになれば わかるだろう
私のこの 苦しみや辛さが
世間はただ ビラをまくように
正しさを装ったきれいごとを叫ぶだけ
物言わぬ街並みと人の冷たさ
変わってしまったのは 人か 私か 世間か
空を見上げ 小銭を数える老いた指先
忘れてしまったからまた最初から
きりがないので 数えるのをやめる
誰かが目の前で 煙草をポイ捨てする
そんな小さな出来事が心を打ちのめす
それが 今の世の姿ですか
代弁をしても 聞き流される
歌にしても 聞き入る耳を持たない
私は私 あなたはあなた
人のつながりをなくした街は
他人と自分との間に隔絶する為の線を引く
見えない 線はまるで人の侵入を
拒むように引かれ 少しでも
自分を隠したがる世の中は 心に目隠ししているようなものだ
だから 肝心なことは いまいち わからない
言葉にすることも 近頃は 面倒に思う
僕の足元にもいつの間にか 線が引かれてる
世の中と自分を隔てる 孤独という寂しさ極まりない線が
いつになれば わかるだろう
私のこの 苦しみや辛さが
世間はただ ビラをまくように
正しさを装ったきれいごとを叫ぶだけ
物言わぬ街並みと人の冷たさ
変わってしまったのは 人か 私か 世間か
多分その すべてだ。