詩人:千波 一也
誰かと比べてみたならば
大きい小さいは
あるかも知れないけれど
空はあまりに広いし
海はあまりに重たくて
ほら、
ひとの手は
どうしようもないくらいに
小さいものだったね
この手は
たやすく何かを失えるから
きっとすぐにも
何かを
つかめる
無邪気だった日のあこがれは
いまも元気に駈けていただろうか
ねぇ、きみ
恥じらうということは
その手が生き生きとして
忙しいということだね
もちろんこの手も
悔やんでは振りはらい続けているよ
欲しいものの名前を呼んでごらん
忘れてしまえることを知って
休むことなく呼んでごらん
そういう類のわがままならば
世の中を溢れても
構わない、と思う
みんな同じなのだから
懸命に
許し合えるはずだと思う
この手は
いま此処にいる
意味するところはただ真っ直ぐに
この手は
いま此処にいる
それだけ確かに届けばいい