詩人:甘味亭 真朱麻呂
遠いあの日を懐かしんでも
もう戻れないんだ
それだけはいくらバカな僕でもわかるよ
気づけば時は流れすぎ
あっという間に僕を大人にして
忙しい日々に身をゆだねている
あの頃から考えれば検討もつかないほどのきびしい毎日に
昨日のように思い出すのは
輝いていた青い若かれし頃と
何もかもが幸せとよぶに相応しい
そんな毎日を僕はいつ落としてしまったんだ?
想い出は空に
この胸の中に
いつまでも焼き付いている
それなのに思い出す度に
こんなにも胸が熱くなって涙が出るんだ
それは歳を取れば取るほどに熱さを増し
涙もろくなる
落としてしまったのは
生き生きとした若さと漲(みなぎ)るほどの元気か
いや、違う
僕は何も落としてなんかいない
ほら、目を覚ますんだ
君の声が僕をあの日に戻してくれるよ
眩しい日差しと
エプロン姿の君の微笑んだ顔
そうだ、歳を取って、大人になって失ったものなどないんだ
君のその笑顔を僕は忘れていたよ
あまりにあの日が懐かしいもので
懐かしさとはかなさが僕に魔法をかけて
忘れかけていたんだ
思わず抱きしめたよ
君のその華奢なカラダに
失ったもの、得たもの
色々あるけど、それらはすべて君の笑顔を見れ