詩人:剛田奇作
俺、引っ越したんだ
キミはそういって
冷めたコーヒーをすする
私は冷静さを装い尋ねた
なんで、また?
別に、ちょっと 環境を変えたくって
キミは、いつだってそうだね
私には何も話してくれない
私が喫茶店に呼び出す度、なにか変化を告げてくる
こないだは新しいバイク買ったっていうし
きっと理由だって、
別に、な訳ないよね
仕事でなんかあったに決まってる
私は、ずっと、聞きたくて聞けなかったことを聞いた
なんでさ、いつも私に話してくれないの?
それとも、身近に相談相手になってくれる人いるんだ
キミは
少し意外そうな顔して
そんな、たいしたことじゃないだろ?
大人なんだから、自分で決めるさ
伝票を、すっと取って席を立つキミ
さ、そろそろ映画行こうぜ
ね、私とキミの距離…
いつになったら縮まるのかな
好きだよ、って言ったらもう二度と映画には誘えない
私が、映画好きって言ったのは嘘
キミが映画好きって知ったから必死に勉強したんだよ
じゃーん
キミはそう言って映画の割引チケットを私に見せた
冬の暖かい日曜日
キミのオレンジ色のマフラー、去年と一緒だ