詩人:タキシード詩者
その瞬間は、別に
特別でなくて
何かが生まれたのでも
何かが消えたのでもなく
出会っちゃったんだ。
確率にしてみれば
壮大な桁数で
しかしそれは薄っぺらく
真実としては本当に
奇跡という言葉ですら
まだすくいきれないような。
君には名前があって
それは特別ではなくて
広いどこかに
既に散っているような
言の葉。
ありふれたと言うには
勿体なくて
勿体ないと言う割りには
消しゴムでも消せて
気にするべきは
部首でも画数でもないのに
小さなハネに怯えている
たった一つのもの
なんて
見分けが付かなくて
自分もそうだ
なんて
ちょっと照れ臭くて
明日でも
昨日でもなく
今日のその
目盛りにも
示されない一瞬が
名付けることもできない
君と僕の
特別なのです