詩人:どるとる
そのまた昔、僕という老人は夢を見ていた
画家になりたかった
確かそんな夢だった
いつもいつも夢を見ては絵を何枚も何枚も日々描き続けた
それでも金をせしめてまで絵を将来の職業に利用しようとは思わなかった
なれなかったことを言い訳にできるならば
僕はきっと遠い未来でそんなことを言うのでしょう
たとえ画家になれなくても夢は夢のまま
いつまでも輝いてる
ずっと絵は描き続けるよ 画家としてではなくひとりの絵描きとして僕は僕の人生を日々絵にしてゆく
老いが僕の記憶までもをしわくちゃにしたって老人はただ瞳の奥に翳りをひそめながらも絵を描き続けるんだよ
それが僕ならば
老人の夢は画家になることだった
でもきっとそれは
いつか変わって
ひとりの絵描きになることに変わったのさ
たとえそれで飯は食えずとも自分が楽しむことを考えたら
趣味にしたっていいはずだと笑うのさ
かわいいベレー帽
目深にかぶって
笑うのさ
歯のない口で
笑うのさ。