詩人:トケルネコ
浮ワをもって 泳ぎにいこうと思ったが 冬
なら映画でもみるかと 久しぶり外に流れたんです
一日の電車は 意外にすいていて
失われた月日を 眺めたんです
改札をぬけると そこはもう街で
クリスマスの名残が輝いてたんです
まばらな人波に混じって 老婆の乞食を見かけたんです
閉じた商店街をさまよって ニット帽を目深に被ったんです
肝心の新作はどこの映画館にも見当たらなくて
コンビニでパンを買って ゲーセンで疲れた足を休めたんです
夜が中盤になった頃 改札をぬけて帰りの電車に乗ったんです
隣席では酔った中年達が 仕事の愚痴を声高に語っていたんです
あんな大人にはなりたくねぇなと思ったけれど 僕も気づけばいい歳なんです
窓外に流れる光の粒子に 失った日々を想ったんです
結局なにしに行ったんだと
深夜の駅でちょこっと笑ったんです
これから何処へ行けばいいんだと
改札口でしばし立ち尽くしたんです
無性に家に帰りたくなって
ポッケに手を突っ込んで空を見上げたら
やけに澄んだ冬の星々が 夜の向こうに煌めいていたんです