詩人:千波 一也
こぼれ落ちる涙に
いとしさを聴く
ときには
いらだちを聴き
いたずらもいましめも聴く
わたしたちは温度を知っている
あるいは
温度の選択を知っている
ことばの川にひたす手は
ぬくもりに濡れるだろうか
それともつめたく
流れの先には海が待つ
みえることと
みえないこととは
同じことかもわからない
意味深に
潮騒は鳴りつづく
こぼれ落ちる汗に
耳を澄ませているのは
水のいのちかも知れない
こぼれ落ちる雨はきょうも
そらより狭く
閉ざされて
すべての温度をすりぬけて
水にふれたい
純粋に
飲み干すものがことばなら
わたしたちの渇きに
終わりはない
いのちの音階を辿るなら
すべての温度をすりぬけて
たとえば笛の
かなたの笛
まで