詩人:千波 一也
照る岩に
砕かれてゆく波のうつくしさ
それはもはや
言葉には乗ってゆかない
冷たい、というわけではなくて
いつからか
鋭いものが岬だとおもっていた
まるくても
まるくなくても
海風が通る、それだけでいい
岬に立てばよくみえる
ねむっていたものを
呼び起こす、夜明けに吐息は
だれかをつつむ
だれかのねむりを
しろく、隠す
朝は遙かにうたがわしい
それゆえ夜は、
満水のそら
落とされまいとする非力さを
確かめ合うおこないが
時刻という名の傷
やわらかに灼ける、髪
草原さながらに
みがかれて
ゆく波
数え足りてしまうところまで
かえっておいで、と
陽射しはいつも
逆説的にとける
走っておいで、
戻っておいで、
瞳の向こうでささやく種火
たてがみに揺れる、季節は
あおくいなないて