詩人:どるとる
べつに悲しいことがあったわけじゃないのにね
夜が来るとなぜかいつもせつなくなる
ふいにラジカセから流れる自分で吹きこんだ歌声
あまりにも下手すぎて笑えた そんな夜
なんでもないのに
泣きたくなるんだ
まるでツキにさえ
見放されてしまった
そんな気になるのは
きっと偶然じゃない
夜に沈むように深い眠りに落ちるまで僕はただ空を見上げながら切なさにどっぷり浸かってた
こんな、広い海を泳げるのに泳げないと弱気になって泳がない魚
僕はそんな人間なんだ
もうひとりでも平気さと本当はさびしいのに強がってる自分を包む僕の歌
もっともっと
作らなくちゃ
えがいていかなくちゃ壊れてしまいそうだ
悲しみに理由なんか要らない
とにかく僕は悲しいのさ
ねえ 泳がないんじゃない 泳げないんだ
いいじゃないか それで
僕は泳げない魚だ
それでも笑ってる
けっして苦じゃないよ
だって自分で選んだ路だから
このまま泳げない魚のまま僕はひとり溺れる
泡となって 大気になって 天へ昇るよ
泳いでいくように
魚のように いつか。