詩人:千波 一也
あのひとの喜びを
多分に私はわかっているから
悲しませるすべも
知っている
おそらく
このまましばらく冷まそうか
それともここらで
温めようか
私、怖いかも知れない
あの手
この手で
あのひとに
触れて、いたくて
ただそれだけなのに
愛しければ
愛しいほど
無邪気に殺しては
殺されてしまう
あのひとと
私とが
むずかしい嘘のために
ほんとが消えても
喜怒哀楽は
覆らない
私、めでたし
あのひと愛でつつ
微笑むために必要なのは
赤かも知れない
黒かも知れない
あやうい爪は何のため
未明の夢の鏡の中で
私はあたまに
角を見る
2007/01/05 (Fri)