詩人:中村真生子
満開の桜の園を歩く。
ここは個人の所有地で
桜の時期だけ日没まで解放される。
他に人はひとりしかおらず
街の中にあって
ひっそりと静寂に包まれていた。
多くは染井吉野と伊豆吉野の古木。
そして、その枝という枝に
その枝の先の先までびっしりと満開の桜。
全身が花と化し
桜は今、どんな気持ちで佇んでいるのか。
何かわかりはしないかと
そっと幹に手を当ててみる。
すると、ぼろぼろになった樹皮が
手のひらをちくりと刺した。
どの木もどの木も…。
それが返事であるかのように。
2012/04/11 (Wed)