詩人:どるとる
逃げるように飛びだした部屋
月明かりだけが僕を照らしてくれる夜
もう休みは終わりだ
どこからか聞こえてくる声がふいに僕を暗闇へ引きずり込む
夜の闇に溶け込んだ黒猫はまるで 宙に浮かんだ目だけのお化けみたい
近づけば猫だとわかる
でも離れたらわからない
不安とかもそういうものなのさ
もう 何からも逃げていたい もう何もしたくないんだ
でも 生きることからは逃げられない
どこまで逃げても追いかけてくる 夜
やたら 早い 速度で僕をつかまえて新しい朝へと放り投げて
気がつけば夢を見てたんだってベッドから起き上がって
いつもの不安生産工場へ急ぐ
全てはそこから生まれる
喜びも悲しみも1日も欠かさず生まれる
生と死のあいだにはさまれて
どちらの扉も完全に開けられずに
生ききれもできず
死にきれもできず
いくつも重ねたためらい傷に涙をこぼす
にじむ 夕焼け空
いっそ あの夜の闇になれたなら
なんて こぼしても
何も変わらない
ただ日々が続くだけ
死にたい気持ち
生きたい気持ち
常に どちらも
同じくらいで
どちらも互いを追い抜かず一定にあるのさ
死ねない 死ねない
生きたい 生きたい
今度は死んでやろう
でもまた死ねなかった
そんな日々が僕をのみこむんだ
朝も夜も 手につかないよ
他人はわかってくれないし
生と死のはざまでただうつろに空を見上げて どっちつかずの日々に身をまかす
いつか風が吹いてきてこの心の帆を あおって
連れて行ってくれたならいいなって
それまではきっと自分では死ねないよ
悲しみはあるよ
死にたくなるくらいの
でも喜びがそれを阻止するように 癒やすのさ
それが僕を悩ませる
どん底に悲しいわけではなくて
素晴らしく恵まれてるわけでもない
だから死ねない
僕は生きてる
生と死のはざまでいつ消えるともわからない運命に飼われ。