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詩人:どるとる
引き出しの中にしまった 傷跡を
今さら 思い出して慌てて引っ張り出す
子供のとき大好きだったアニメの主題歌
歌いながらたどる小さな僕の足跡を
ないとわかっていながら 探す宝物
ステッキひと振りで出来るお手軽な魔法
そんな 奇跡に 出会うための 祝砲
夜明けに鳴らして 君に届きますように
目には見えない真っ白な手紙を送るよ
朝もやに隠れ潜む 顔見知りの悪意を
片手の指だけで数えられたらいい
約束の場所まではもう少し 走らなきゃ
水上バスが 波を立てて橋をくぐる
心の中につくった二人だけの秘密基地
旗には オリジナルのマーク
誰にも邪魔されない 素敵な妄想世界
二人だけにわかる暗号で示した未来
五月の 畦道に雷と雨が 降り注ぐ
雷に怯え濡れながら走った あの日
僕らは何処にいたんだろう
そして何処を目指していたんだろう
それさえ曖昧なのは誰のせいだろう
結局世界を 出来合いの物差しではかる日々
ステッキひと振りで出来るお手軽な魔法
そんな 奇跡に 出会うための 祝砲
夜明けに鳴らして 君に届きますように
目には見えない真っ白な手紙を送るよ
ありったけの思い出と一緒に。