詩人:おるふぇ
誰も見ることがない景色をただ
心臓の奥に抱えたままで
死ぬことを
許して、マザー
生きることを知らないまま
涙を渡って著作権のない書物の上を
どこまでも走ればいい
これは死なんだと
諭されて気づいた時は
もう遅いのでしょう
マザー、マザー
どうして産んだんだよう、と
背中を叩いて
傷ついて傷つけてきた
言葉が突き刺さる
この心臓は
暗闇でも鳴るんだと
誇らしくピエロが
淋しそうに、悲しそうに
話し掛けるんだ
夢の中
生命
(家族という川を流れてきた歴史)
生命
(幸不幸の物差しが魂の純化を妨げる)
すべてを
壊したくなる瞬間の衝動
うん、
よくわかるよ
うまく、
飲み込めないんだ
けれど、
掴めばいい
差し延べられた
手
それは、
幻とは違う
愛、光、叡知
血液が全身に運ばれる
マザー
元気に生きていきます
それでいいでしょう?
愛してると
何度も言うあなたよ
こんな僕のことですら
なぜに優しく
包むのですか
あなたに包まれ
聴いた美しい音が
静寂の部屋で
何度も
僕を許してくれた
どんなありがたい話よりも
何倍もの説得力を持って
マザー
この年になって
泣けるのは
あなたの前だけです
すべてを懐かしく
許してくれた心の音