詩人:千波 一也
かなしむこころではなくて
かなしみという言葉を覚えなさい
よろこぶこころではなくて
よろこびの色彩に詳しくなりなさい
問うことはよそにまかせて
やみくもになぞりなさい
優しさといたわりと子守歌と
そこに上手に落ちつけば
皮膚の温度は恒常です
はなさぬように
はかりなさい
ありがたいものはすり替わり、
俊敏に嗅ぎ分けることです
愚鈍さを
鋭利に聞き分けることです
優劣を
ただし隠して
野性をひそめて
思いやるための思いやりさえ
まぼろしと消す
すべての
すべに
こたえることをまずは預けて
ごまかすことに慣れなさい
それほどかたりはたやすくて
すぐにもかたちはいたむのです
ひとごと世ごとに
むずかしく