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詩人:中村真生子
幼子は
花びらを集めていた。
ビニール袋いっぱいに。
「何をするの?」と聞くと
「ぱあっとする」のだという。
おばあちゃんの手と
ビニール袋を握りしめて
よちよちと山の上の方に登っていった。
きっといちばん高いところで
ぱあっとするのだろう。
桜にそんな楽しみがあることを
幼子に教えてもらう。
咲き誇る桜だけでなく
散った桜にも
楽しみがあるのだよと…。
ずっと面白い
楽しみがあるのだよと…。
1年に1度
薄紅色の雨が降る季節に。
あの子の小さな手からも
薄紅色の優しい雨。