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詩人:祈
春の訪れを感じた‥
それは
まだ寒い日の出来事――
いつもの道を
歩いていると
一輪の花が
蕾のまま
枯れようとしていた―…
それを優しく手に取り
この部屋で
大事に
大事に温かく見守った‥
いつしか
その花は
背筋を伸ばしたように
見えて
一生懸命になって
僕に応えようとしている姿を感じた
僕だって
一生懸命だよっ‥
そう話しかけてみると
よく見ると
なんだか恥ずかしそうな
そんな
仕草をしているようだった――…
その花に
『凛花』と名付けた‥
毎日 愛情を持って
与えていると
凛として
強くなって
美しい花びらを纏い
とても綺麗になっていた
蕾だったあの頃
それは
ただそうしていたわけではなくて
ちゃんと耐えて
強く 凛とする為の
ものだったんだろうって
その綺麗な姿を見た時
そう感じた――‥
春がきて‥
風を感じ
陽射しを浴びて
季節が巡り
雨露に
音色を聴き‥
透明な水光を反射して
季節が巡り
青空のなかに
白無垢の雲を着流して‥
宵には
風鈴を灯して―‥
また‥
季節を巡り
紅葉の褐色には
秋風を感じた
田園の招く稲穂の祈り
そして‥
季節は巡り
澄んだ夜空の星たちに
願いを叶えて‥
悴んだ手をとり
包み込む温かさに
愛情を受けて
そして‥また‥
懐かしさを覚えた
あの春を感じて
『凛花』と共に
季節を巡る―‥