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[191324] 早春譜

詩人:どるとる


風に散る花びらを見た午後に
なぜか僕の心から 大切なものが
風にさらわれた気がした

春の終わりは 桜色の絨毯
道に敷き詰められて

空を あおいだ眼差しが飛行機雲を
ゆっくりと なぞるように 見届けて

いつの間にか 引き出しの中にしまわれた
思い出の顔をした 小さな恋の押し花

絵手紙をポストに 出した朝
遠い街に住む君に届くかな
そちらはおかわりございませんか?

望遠鏡越し 覗きこんだ
丸い 地球の外側

少しだけ恋の幸せと悲しさを知った唇は
赤く染まって もう僕の知ってる君じゃない

この街を出てゆくときは 重ねた思い出を 惜しまぬよう置いて行こう

旅立ちと別れの季節に吹く風は
誰かを遠く 見送っている

そしてまた ひとつなにかが始まって
静かに終わる いくつもの命を 弔う

空を あおいだ眼差しが飛行機雲を
ゆっくりと なぞるように 見届けて

いつの間にか 引き出しの中にしまわれた
思い出の顔をした 小さな恋の押し花。

2016/04/08 (Fri)
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