詩人:千波 一也
傷つけられた優しさを疑えなくて
それは
無人の駅をあわれむかたわら
あやまることに落ち着くような
似ているものはゆるせない
冤罪の
かぜ
七月は
どこまでも気がつけない海だった
忘れた記憶を空へとあずけて
いつまでも蘇らない
とわの香りが
八月で
公園の輪郭は滲んでしまった
連れて行くゆび
それとも連れられて行くゆび
わからずにいる背中で時計は
静寂を刻み込む
立ち止まるということは
こんなにも
鋭くて
涙はなにも包まない
包むとすれば
それはかなしい気位の熱
移ろいやすい秋の景色に
たやすく添えたら楽かも知れない
けれど
沈めない行方に誘われ続けて
やわらかな枯渇に
まぼろしを呼ぶ
手慣れた眠りにさすらいながら