詩人:千波 一也
月のしずかを詠むほどに
月を
寡黙に封じ込む
聴きそびれていたかも知れない
のに
細い肩には雲をのせ
風をたよりに
風さえも
去り
物云わぬ、とは誰の語りか
むなしき胸から離れもせずに
物云えず、して
帯に添えるゆびさきの
つつましき、その
おぼろな
帯は
ながくひかりを浴びぬまま
あえなく燃えて
あかりと散るのみ
草花が、教えない
海ならば
聞こえない
握った空から空は逃げても
響いていかない
なお、月は詠み
それとは気づかず
砂のごとくに
月を詠む
みだれぬ調和をかなしく奏でて
くれないに凪ぐ
蒼のいただき
迎えているのは
見送りの、
円