詩人:千波 一也
窓の外は、夜
それゆえ汽車は吐息のように
曇り曇って
揺れに
揺れ
そこからなにが見えますか
わかりやすいものは
なぜだか頼りなくおもえて
背伸びをしてみたけれど
やっぱり瞳は黒でした
いつもいつでも
ときどきは
いさぎよく溺れてみたいものですね
たとえば愛に
夜汽車に乗って
あるいはそれすらも遂げられぬまま
窓の内は、窓
あなたはどこを往くいまですか
相席でも
すれ違う車両でも
仰ぐ月には変わりがなくて
どこまでも風ですね
気がつけない嘘、
なのですね
荷物は軽く済ませたいのに
叶うなら
やさしい町まで
待つことだけを忘れたわたしを
こころゆくまで笑えるように
いつかの影はもう遠くても
眠りはそばに
必ずそばに
なくしたものはそのままですか