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[95527] 動脈

詩人:千波 一也



どんな夜にも月は鎮座して


 炎と水とがこぼれ合うから

 欠けても

 ゆるし

 て、


けものは静かに

帰属する



荒涼の異国を踏むようにして

夢見の鮮度に奪われて

濁りのそこには

清らかな、

らせん

健気に待つ身を

みせながら



 月は、まだか



重なる針に畏れをなしても

継がれてゆくものは

ひとつの冷酷


鼓動を拒むさなかでなら

失わずに済んだかも知れない


 手のなかで握るものに

 いつからか

 傷ついて

 紛れる、

 ふか

 く



ふり仰ぐたび

思い出せるような気配が

肩にそっと

圧力を



 まだ、

 生きて、まだ、



無言がほころぶ夜にだけ

のぼりゆける

音階がある


 ともに、

 ともに、触手をかばい合い

 ながれのために

 その脈拍

 は



射抜かれるほどの透明を

つなげて

消えて



しじまは、遙か


2007/02/05 (Mon)
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