詩人:千波 一也
どんな夜にも月は鎮座して
炎と水とがこぼれ合うから
欠けても
ゆるし
て、
けものは静かに
帰属する
荒涼の異国を踏むようにして
夢見の鮮度に奪われて
濁りのそこには
清らかな、
らせん
健気に待つ身を
みせながら
月は、まだか
重なる針に畏れをなしても
継がれてゆくものは
ひとつの冷酷
鼓動を拒むさなかでなら
失わずに済んだかも知れない
手のなかで握るものに
いつからか
傷ついて
紛れる、
ふか
く
ふり仰ぐたび
思い出せるような気配が
肩にそっと
圧力を
まだ、
生きて、まだ、
無言がほころぶ夜にだけ
のぼりゆける
音階がある
ともに、
ともに、触手をかばい合い
ながれのために
その脈拍
は
射抜かれるほどの透明を
つなげて
消えて
しじまは、遙か