詩人:千波 一也
なつかしい匂いに
ひたる冬、
寒さは
使い慣れたはずの指先に
疑いようも無いくらい
数をつのらせて
まもるべきが
すべて、に
なる
泣いてしまうことも
ねむってしまうことも
きっとなりゆき、
逆らうことで
知りうる
空、の
思い出さない約束を
思い出せなくなるまで
ここは、
手紙
宛名を忘れる代わりに
風のことばを
ただ負って
損ねた、
いろ
覚えきれないものは
誰にでもあるから
ささやく形で、
粉雪は
ふり
上がってゆくものが綺麗
舞いながら、散り
さかいを幾つも
さまよって
頬が濡れたら、きのう
きのうはどこにも
下がらない