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[97070] 代償

詩人:千波 一也


 きみの名前をおぼえた日から

 ぼくはふたつを呼んでいる


やさしさは偽らないからね

溢れても

まみれても

ささやかなすべてを

見失わないように


 疑うことは

 まもることから始まってゆく
 
 信じることは

 攻めることから転じた姿


あしたはやがて

きのうに変わると云うよ

いくつのきのうが

安らぐだろう

ここでいま



みたこともない宝石は

いつまでも輝くのだろうし

きっとすばらしいのだろうけれど

気づかないまま

踏みつけてしまったりは

しないものだろうか


 語り尽くされたものの隙間から

 こぼれるなにかを待ちながら

 ぼくは

 きみの名前を

 ひとつに結んだ

 ふたつの腕で

 愛のさなかで



真っ直ぐに

真っ直ぐなものをたよっている

やわらかに

やわらかなものを傷つけている


 触れるということは

 あまりにも非力さを明るくするけれど

 それはかなしみではないね


 敢えて言うなら、そう

 かなしむための


2007/02/26 (Mon)
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