詩人:どるとる
あるところになんて曖昧な存在で語られるより完全に歴史から消え去ったほうが幸せだ
生まれてから死ぬまでの長い時間を幸せに過ごせたなら素晴らしいね
だから僕は歴史になんて刻まれなくてもいいんだ
全くの普通の人で構わない
それどころか変人で構わない
心のアトリエに居座って僕は僕を描くよ
僕の描く僕はいつでも出来損ないの不細工な顔でみんなには嫌われてばかりだ
それでも描き続けるのは僕だから
僕が描く僕は僕でしか描けないから
このアトリエからは一歩も出られない
永遠に僕は僕と離れられないように
僕はずっとこのアトリエに心もからだも縛られたまま動けない
だから 暇潰しだ
僕を描くのも僕に色を塗るのも
絵描きなんてとんでもない
僕はただの人間だ
歴史になんて載りたくはない
だから謙虚なたたずまいでもって生きたい
秘密のアトリエで
顔もわからない
ただの人間のまま
僕は僕を描き続ける
誰も入れず 誰もたどり着けない心のアトリエの中で
輝いている孤独な僕はひとり居座る
またひとつ絵ができた
新しい 僕が生まれた。