詩人:どるとる
東京に行くと決めた日
母と父は 反対しなかった
重たいギターケースに詰め込んだ夢は
途方もない未来への博打だ
とにかくやってみないことには
わからない世界の話だから
やりもせずあきらめた後悔だけは
したくないと 踏み出した東京
たまの電話で元気にしてるかと
無愛想な父の顔を電話の声の向こうに
イメージしながら ほくそ笑む
旅立ちと別れの季節がまた誰かの背中を
押してゆく そこに吹く風は はじまりの匂いがしていた
右も左もわからない東京で 頑張ってるよ
いつ叶うかもわからない夢を
きりもなく 追いかけながら
間違い探しをするよりも
この街に腰を落ち着かせてよかったこと一つ一つ思い出しながら 誰かの優しさに見つけた居場所
陽射しのような あなたの笑顔に
いつの間にか恋をしている
この気持ちを伝えるには
まだ僕は 身の丈に似合わず寸足らず
何もかもが新しくなってゆく
洗い立てのシャツのように
真っ白な 晴れた空に浮かぶ浮き雲
流れ星が流れたら 僕なら何を願うだろう
まだ何者でもない僕は何になろうか決めかねてる
まっさらなノートのページいっぱいに
描いた 未来予想図は些か壮大すぎて笑えるな
でもどうせ叶うなら 大袈裟な夢を見るよ
たまの電話で元気にしてるかと
無愛想な父の顔を電話の声の向こうに
イメージしながら ほくそ笑む
旅立ちと別れの季節がまた誰かの背中を
押してゆく そこに吹く風は はじまりの匂いがしていた
窓の外では静かに夜が明けようとしていた。