詩人:千波 一也
雨粒を
ゆるすしかなかったことが熱だった
ほんの
一握り、の
うばわれるものも無く
渡ってもらうことで
どこか安らいでただ濡れていた
それしかなかった、
雨だれに
ほそく
もう、
ちかいと思っていたのに
だれのことばも
こたえに聞こえてしまう
肩はなおさら
ひとりを
耐えて
いつからか
或いは、いつまでか
ふたつの瞳はかさならなくて
無言をあびせる雲たちが、
そら
おなじ、
みなおなじ
ここに、いたいけれど
向こうにも染みて、いたいから
すくわれてしまう水の日は
まだまだ深い、
はなせない
おぼえ忘れた果実のような、
あらがえない
しずくの
めぐみ
ひみつをかばう鍵の重さは
すぐに時計を透けてゆく
ほら、
千の槍が降る
紛れようもないものに
あらわれながら