詩人:どるとる
夏の陽射しが アスファルトに照りつけて
まるで 熱せられたフライパンのようだな
蝉時雨がうるさいくらいに 聞こえる昼下がり
畳の上に寝転がって 天井のシミを数える日々
たまに心地よい風が運ばれてくる
誰の心の中にもあるはずの夏の原風景だ
花火にでも行こうよって なかば強引に
手を引かれてたどり着いたのは神社
赤い鳥居をくぐってお参りしたよ
賽銭をけちって 一円玉ですましたっけな
思ったよりもきれいな花火がいくつも
打ち上げられて 耳をふさいだ僕は
君の声が 聞こえない もう一度言ってよ
「ずっと前から好きでした」 なんて不意討ちさ
惚れないはずはない
断る理由はないだろう
小さな子供たちが 畦道を駆けていくよ
駅前の図書館 涼むにはちょうどいい
入り浸りするなと 先生は 言ってたけど関係ないや
夏休みだってだけで僕らは自由を手にしてる
兵隊の行進みたいに足並みそろえたように
バラバラのリズムをひとつに束ねる魔法だ
恋をしていたのは僕も同じかもしれない
素っ気ない態度で気持ちをごまかしてた
ラブストーリーみたいな恋はしたくない
ドラマ仕立ての台本がそこに見えるから
僕らは僕らに似合う不器用で下手くそな恋をしようって言ったそばから
君はドラマのような展開を望むから 僕も乗ってしまうんだよ
柄にもないね「愛してる」なんて言葉はドラマの中だけにしてよ
そうは言えない僕はドラマのように恋に落ちる
そっぽ向く僕に 今花火が上がったのに
目を反らしてただけで むくれてしまう
頬に膨らみをつくって ご機嫌斜めだ
どうせすぐ 笑うのに面倒だなあ
思ったよりもきれいな花火がいくつも
打ち上げられて 耳をふさいだ僕は
君の声が 聞こえない もう一度言ってよ
「ずっと前から好きでした」 なんて不意討ちさ
惚れないはずはない
断る理由はないだろう。